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ICカードで労働時間を管理する

ICカードを利用して労働時間を管理する企業も多くみられるようになりました。

このICカードでの労働時間管理で注意しなければならないのは、実働時間として管理するのか、事業場や施設への入退出時間の管理を主にするのか、管理の目的を明確にしておく必要があります。

ICカードによる労働時間管理が争いとなったもので「オリエンタルモーター事件(東京高裁H25.11.21判決)」があります。

この裁判では、ICカードは施設管理のためのものであり、その履歴は会社構内での滞留時間を示すものに過ぎないから、履歴上の滞留時間をもって直ちに時間外労働をしたと認めることはできないとしたものです。

会社はICカードでの出退勤時間管理を指示していましたが、終業時刻後に社内で資格取得のための自己啓発を認めており、この際も、勉強等を追えて退出する時刻をICカードにより記録していました。

労働者側は、残業の内容として日報を作成していたと主張していますが、日報は実習の経過を示すもので会社の業務に直接関係するものではなく、提出期限もなかったこと等から、残業が必要であったという根拠にはならず、また会社側が日報作成のために残業を命じたことを裏付ける証拠ではないとしました。

労働者側は、時間外労働として翌日訪問する営業先の下調べをしていたとも主張していますが、本人は実習中であり一人で営業先に赴くこともなかったため、下調べも労務の提供を義務づけていたとする事はできないとされました。

さらに、着替えや朝礼、朝のラジオ体操への参加は強制ではなく任意であり、着替えや掃除が義務づけられていたものではなく、飲み会への参加や一気飲みを強要されたことを認める証拠もないとして、労働者側の請求をすべて否定し、原判決を取り消しています。

この判決が直ちに、ICカードでの労働時間管理はすべて施設管理であるとする事ができるものではありません。

あくまでも施設管理のためのものであるとする実質的な運用がされていること、ICカードによる時間管理以外に、実労働時間を管理し時間外労働や休日労働を会社側が指示し把握できる方法を運用している事が求められます。

日報についても、会社によって使い方も報告内容も様々で、内容によっては、今回の判例とは逆に時間外労働を立証するものにもなりかねません。

実労働時間をいかに管理し把握しているかが、労働時間を取り扱う上での重要なポイントになります。