IT industry-specific work rules

就業規則は、企業で働くうえで必要となる最低限の就業ルールを定めたものといわれます。しかし昨今の捉え方では、最低限の労働環境を定めておくだけのものではなくなってきています

服務規律や個人情報の取り扱い、企業情報の漏えい防止、メンタルヘルス、懲戒内容など、企業や従業員をとりまく様々なリスクを少しでも回避するために 、個別具体的に明記をして整備する必要があると考えられるようになってきています。もちろんIT企業も例外ではございません。

就業規則って必要なの?

会社の方針を反映しない就業規則では全く意味がありません!
就業規則はIT企業にとって、その従業員にとって大事なものでしょうか?

パート・アルバイトを含んだ従業員数が10人以上いる場合には、労働基準監督署への届出が義務化されています。『だから仕方なく作って出しました』という方はたくさんいらっしゃいます。
『うちは10人も従業員がいないから規程を作らなくてもいいや』とお考えになる方も多くいらっしゃいます。
残念ながら、どちらの場合にしても、その会社の健全性と発展性を考えてのこととはいえません。
IT企業は、一般的な企業と違って、実際の就業状況が「裁量労働型」だったり、給与体系が 「年俸制」だったりする事が多く 、このような場合には、余計に就業規則にルールを定めなければいけません。 
また労使協定を社員代表と締結し、さらには労働基準監督署への届出が必要だったりします。
対策を打たずに、一旦会社と社員間でトラブルが起きてしまうと、これを解決するためにリソースコストが膨大に発生し、果ては事業活動に注力すべき経営者までトラブル解決に心血を注ぐ結果となってしまいます。規程がない、暗黙の会社ルールだけでは、人事労務問題は太刀打ちができません。
IT企業こそ「IT企業向けの就業規則」をしっかりと作成しなければいけません。 就業規則をつくるという事は、会社にとっても社員にとってもメリットがあるものだと認識を、ぜひ持って頂きたいと思います。
社員にとっては働くためのルールが明確になっていて働きやすいというメリットがあります。
対して会社にとっては、万が一社員とのトラブルが起きた場合にも正当に対処する事ができるメリットがあります。
就業規則は会社がどのような方向に向かい、そのためには社員にどうやって働いてもらうのがいいのか、経営者の想いがコンプライアンスの元に反映されていなければ意味をなしません。

就業規則作成の注意点

会社の方針に合った就業規則をもちましょう!

就業規則を作成する際にポイントとなる点を以下にあげてみました。
いずれのポイントも、IT業界では特に注意して規則内容を検討いただきたいものです。
IT業界に関わらず、労務トラブルを回避し会社を守るための重要なポイントとなります。

就業規則を作成する7つのポイント

  1. 採用者の試用期間をどうするか
    試用期間については、各社とも期間(3ヵ月とするものが多いようです)は定められており、この期間を状況に応じて短縮・または延長する旨は規定されています。
    単に期間を定めるのではなく、試用期間中に発生し得る労務トラブルをより具体的に明記し、この場合にどのような対策を講じるのかまでを可能な限り規定しておきます。
  2. 在宅勤務を認めるか
    IT業界特有の勤務形態のひとつに在宅勤務があります。
    この勤務形態での就業を認める場合には、実際の勤務状況の把握が難しくなるため、労働時間の管理方法・経費精算方法・労災が発生した場合の対応、人事評価方法などを必要に応じて別規則を設けて規定しておく必要があります。
  3. 病気や怪我への対応
    メンタルヘルス対策と合わせて検討することとなりますが、うつ病などの精神疾患による休職に対して、就業規則上の休職にプラスし、一定傷病による休職を救済するものとして設ける場合があります。
    これは会社が医師の診断書や本人との面談を元に、今後の復職が期待される社員に対し、一定日数の有給休暇を与えます。
    本来の休職期間+本休暇期間を経過しても傷病の改善の兆しがなく復職が難しい場合は、退職を促すこととなります。
  4. 情報漏洩問題
    今や勤務中だけではなく、業務外でも情報セキュリティに関する規定は不可欠とされています。

    特にIT業界では、営業秘密の情報漏えいの防止を万全にする意味でも、セキュリティをどのように考え対応しているかを、規則上でも明らかにしておく必要があります。

    就業規則内の服務規律部分に、やってはいけない行為・守るべきものを具体的に詳細に明記をし、違反した際にどのような懲戒処分となるのかを、懲罰規定とリンクさせて定義しておきます。

  5. メンタルヘルス問題
    会社がメンタルヘルスを捉えているか、メンタルヘルスに対してどのような対策を講じるのかを規定します。
    この場合、定期的な調査の実施、調査結果に応じた専門医の紹介など、会社の本問題に対する姿勢を規定することで、従業員に安心感を与え業務に専念させる意識付けを行うこともあります。
  6. 解雇処分の取決め
    現行の労働基準法は、法律が制定された背景からも従業員を権利をいかにして企業から守るかが基準となっており、特に解雇処分を下さざるを得ない場合には、それ相当の手順を踏んだ結果としてでないと処分が認められていません。
    つまり会社側からみると、これは解雇に相当するだろうという勤務態度や事件だったとしても、安易に解雇にはできないという現実があると認識しておく必要があるわけです。
    では会社を少しでも労務リスクから守るにはどうすべきなのか。。。
    想定でき得るだけの懲戒処分内容を、それぞれの処分事項に応じて規定しておき、実際に処分すべき事件が起きた際に、相当の手順を踏んで対応できるようにしておくこととなります。
  7. 機密保持と著作権
    機密保持に関する規定をしっかりとしている就業規則をみかける事は正直あまりありません。
    会社の機密事項は漏えいしないようにしなければいけない。。。程度が一般的かと思います。
    機密保持に対する重要性を意識づける意味でも、どんな情報が機密保持事項にあたるのか、どのような媒体で保管されておくべきなのか、使用・持ち出しする際の決済・承認方法などを具体的に明記しておくべきでしょう。
    合わせて著作権についても、会社に帰属する権利はどこまでの範囲なのかを具体的に明記しておく必要があります。
    以上より各ポイントの共通点としていえることは、具体的に・詳細に規定することで会社を守ることができるものは極力具体的に明記しておく、に尽きるでしょう。
    従来の就業規則に対する捉え方では、内容を曖昧にしておくことで、様々な労務リスクに対応するとされていましたが、この曖昧さが災いし、就業規則の内容を拡大解釈され、多大な負担を強いられる結果につながってきました。
    ぜひ一度自社の就業規則を見直し、労務対策が講じられているか再確認してみてください。

IT企業における会社を守る就業規則ポイント

  1. 営業職・事務職などそれぞれの職種や業務内容にあった労働時間管理の制度が設けられている
  2. 試用期間について、単に〇ヵ月と規定するのではなく、チームワークを乱したり、試用期間中に正式雇用の判断がつきにくいときに、採用を見送るための理由とルールが具体的になっている
  3. 短時間勤務や在宅勤務などの例外的勤務を認めている場合に、労働時間の管理方法・経費精算の方法などが具体的になっている
  4. メンタル不全で遅刻・早退・欠勤など勤務状態が不安定な社員に対して、休職・復帰時の指示・発令が具体的に規定されている
  5. PC使用規定、セキュリティ管理規定などの勤務中のセキュリティに対する規定がされている、また在職中・退職後の情報漏えいリスクを防止するためのルールを定めている
  6. 時間外手当の支給の残業申請・承認のルールが徹底されている
  7. 解雇・懲戒処分について、処分事由が個別具体的に定められている。また、軽い処分から重い処分へと会社が処分を下すためのステップが踏めるような処分になっている

IT企業における各種規程の一例

基本経営(会社運営の基本的事項)
定款 役員の人数・任期・報酬、営業年度および決算期
取締役会規程 取締役会における決議事項、報告事項
諸会議規程 会議体・各権限
規程管理規程 制定、改廃の手続き及び権限
監査役会規程 会計監査人からの報告に関する定め
株式取扱規程 関連法令遵守
インサイダー取引防止規程 関連法令遵守
役員規程 など
組織権限(組織や業務およびその権限)
組織規程(組織図) 組織図、常設会議、役職
業務分掌規程 職位の責任・権限
職務権限規程 各役職の権限範囲
稟議規程 稟議範囲とその明確性
関係会社管理規程 関係会社・子会社等の定義
人事労務(社員の処遇や服務ルール)
就業規則 就業ルール、労働基準法の遵守
賃金、給与規程 雇用形態・男女間・役職等との整合性
退職金、退職年金規程 既得権、支払範囲、算定基準
出張旅費規程 支払範囲、算定基準
転勤旅費規程 支払範囲、算定基準
社内貸付金規程 期間、貸付限度額、利息
従業員持株会規程 など
業務管理(業務遂行上の規則)
経理規程 経理方針や経理業務の手続き
原価計算規程 原価計算の目的・計算方法
内部監査規程 内部監査の目的・種類・権限
購買管理規程 発注管理、検収方法
外注管理規程 外注業務の範囲、棚卸方法
在庫管理規程 棚卸方法・その範囲
債権管理規程 回収方法の役割、与信限度額基準
与信管理規程 与信限度額基準
予算管理規程 など 詳しくは経理規程
総務関連(総務および関連事項)
文書取扱規程 保存期間・方法の法令違反
印章取扱規程 保管方法、取扱い部署
固定資産管理規程 管理方法
安全衛生管理規程 責任部署、運営方法
社宅管理規程 社宅管理
人事考課規程
ハラスメント防止規程
個人情報取扱規程
特定個人情報取扱規程
セキュリティ管理規程
在宅勤務・テレワーク規程
副業規程 など

当事務所の就業規則の特徴

  • 就業規則専門スタッフがフルサポートしております。
  • IT業界に精通した社労士がIT業界向け就業規則をご提供。

具体的なサポート内容

就業規則の雛形を納品して終わりではなく、担当の方と毎月面談を重ねながら、6か月以上かけて、一緒に働き方をじっくり考えていきます。現在はオンライン面談にも対応しています。毎月の打ち合わせと労務アドバイザリーの内容をセットにしているため、ただ単に就業規則を策定するだけでなく、労働時間管理をどの制度にするか、年次有給休暇の管理方法、実際の運用面でどうすれば運用しやすいのか、労働者側の意識も変化していることもあり、どのように周知すればよいかなどのご相談を多くいただきます。働き方改革関連法が施行された2019年以降、ご契約が増加している就業規則サポートになります。

就業規則のセルフ診断

就業規則を見直しすべきか判断できるセルフ診断項目を用意いたしました。働き方改革関連法対応、ウィズコロナやアフターコロナを見据えたリスク対策等を踏まえると、下記の項目に「対応できていない」場合は、就業規則の見直しを推奨いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

【労働時間】タイムカード等、労働時間の管理を客観的な媒体を用いて管理するよう規則にできている

【健康管理】長時間労働が発生する従業員に対して、医師による面談が可能な旨を周知できている

【残業時間】残業が発生する場合は、上長・所属長に申し出および許可を得た上で行うとされている

【有給休暇】有給休暇5日取得義務対応のため、事業主からの時期指定や取得推進制度の構築をしている

【ハラスメント】ハラスメント関連(パワハラ・セクハラを含)の規定が整備できている

【テレワーク】職場の変更・配置の変更について業務命令として指示することができると規定している

【休業命令】会社の指示により休業をする場合、休業手当の支給を明文化できている

【費用負担】テレワークの場合、PCや通信費等の負担について明文化している

【労働時間】テレワークにおける労働時間の管理制度を設計している(日報・残業の事前・事後の報告等)

【時差出勤(臨時的)】労働時間の繰り上げ・繰り下げについて明文化ができている

【副業・兼業】副業・兼業の規定の整備、許可申請等フローができている

【通勤交通費】テレワーク勤務時の通勤交通費の取り扱いについて明文化している

【服務規律】出勤停止命令に反して出社をする場合等、指示に反した就業への服務規律を定めている

【就業制限】新型コロナウィルスへの感染時について、就業制限をできるように対応ができているか

【時差出勤(継続的)】時差出勤が可能となるルールの設計ができている

【労働時間制度】フレックスタイム制度など、自社のテレワーク勤務に適した労働時間制度を導入している

【病気休暇】業務外の私傷病について、従業員が安心して働けるように一定の特別休暇を導入している

料金

月額7万円~(最低ご契約期間6ヶ月)

就業規則 実績

対応企業数:443社(数名~7,000名規模)
※2023年3月現在